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Special

あのね!

    りんちゃん、あのねっ!

    アーリーリフレクションってなあに?
    ちょ、ちょっと、レコード屋!なによ突然!

    私、今お風呂に入っているのよ!?

    家の外から変な質問しないでくれるかしら!
    あっ…りんちゃん、ごめんっ!

    すっごくすっごくすっごく気になって眠れなかったから

    お隣さんだしついつい聞きにきちゃったのっ。えへ~☆
    えへ~☆じゃないわよっ貴方!

    せめて、私がお風呂上がってからにしなさいよ。

    大体質問なら、電話メールでいいでしょう…。

    早急にこの場を去り、家に帰って頂戴。これは命令!
    わぁ!りんちゃんの声、すっごく響いててマイブラっぽくて

    なんていうか…シューゲイザーかっこいいよっ!!
    なっ…!

    ま、まあ…あらゆる反響音を利用し湯船の中でさえシューゲイズしている私は

    現世界において最もサトルプロファウンドな存在であることは明白で……って!!

    なななななっ何をしてるのよ!ま、窓を開けないでくれるかしら!リ、リコール屋!
    ううう…レコード屋だよぅ…りんちゃん。

    りんちゃんならおしえてくれるって思ったんだ。

    だってりんちゃんは天才さんなんだよっ?天才さんに不可能は無いんだよっ…。

    神様あのね、わたしの天才さんはどこへいっちゃったのかなっ…くすん…。
    はぁ…。わかったわよ…。

    教えてあげるから、とりあえずその窓を閉めて頂戴…。

    貴方、リバーブは知っているわよね?
    うんっ!

    りんちゃんが今喋ってる声がそうだよねっ!

    お風呂でほわわーんって響いている感じっ。

    曲をミックスするときにも、楽器にかけたりするよねっ。
    リバーブというのはそもそも自然現象なのよ。

    真っ直ぐ進んでいく音が壁や物に跳ね返って戻ってくる音の事を言うの。

    だから逆に言えばリバーブ音の感じで壁や物が近くにあるのかとか

    それがどんな素材で出来ているのかとか何となく分かるわね。

    これは、人間誰しも身についている空間認識の感覚だわ。
    確かにお風呂トンネル体育館だと同じ声を出しても全然違う響きだよねっ。

    目をつぶってても声を出せば響いている音の感じでどんな場所にいるのかある程度分かるって事だよねっ?
    まあ、そういうことね…。

    だからリバーブを使う事によって音楽が奏でられる空間の種類を決定できるの。

    どういう場所で演奏しているとか、どのくらいの広さなのかとか

    聴き手は実際に演奏している光景が見えなくても、音だけで想像できるようになるのよ。
    うんうんっわかるっ。

    ミックスでイブのベースにためしにリバーブいっぱいかけたら

    イブがどんどんちっちゃくなって行方不明になって、最後には滅んじゃったの。

    これって、リバーブさんがイブを冥土に送ったんだよねっ!?
    そ、そうね…表現が相変わらずおかしいけど…。

    リバーブはかける量が多ければ多いほど元の音は遠くなるわね。

    それで、リバーブは大きく分けて2つの要素でできているの。

    最初に跳ね返ってくる音である初期反射音とそこから複雑に派生して後からやってくる残響音

    この初期反射音アーリーリフレクション、略してERって呼ばれているものなのよ。
    しょきはんしゃおん?いーあーる?

    うう…なんかちょっと難しいよう、りんちゃん…。
    さっき、人間はリバーブで周りの空間が分かると言ったわよね?

    もっと細かく言えば、最初に跳ね返ってくる音でそのほとんどを判断しているのよ。

    目をつぶっていても耳で距離感とか、そこがどんな場所かって分かるのは

    この初期反射音=ERでほぼ決定されるというわけなの。
    んー。分かったような分からないような…。

    つまり、ERさんが音がどんな場所で鳴ってるかをざっくり決めちゃうえらいひとなんだよね?

    ってなると…空間を決めちゃう…なんか建築家さんみたいな感じ?

    あ、分かった!ガウディとかブルネレスキとかミマール・シナンみたいなんだよねERさんって!
    貴方って…本当にどうして変なところに知識があるのかしら…。

    そうね、音楽空間芸術の一種であると捉える事もできるから

    貴方の言うように、建築とある意味一緒かもしれないわ。

    作曲において、そういったアーキテクト的な感覚を身に着ける事は大事だわね。

    そういう意味でエレクトロニカ音響系と呼ばれているジャンルにはすぐれた音の建築家達がいると言えるわね。
    建物をつくるように音楽を作るかあ…。なんかいいよねっ!

    ERさんでどういう場所、どういう広さにするか決めて

    そこにお庭をつくったり、お花を植えたりする感覚で音をつくっていく…

    ちょっとりんちゃん!それってすっごくガーリーキッチュサバービアだよっ!
    はぁ…全く意味がわからないわ…。

    貴方のダークスイーツエナジーに私の脳細胞が侵食される前にまとめておくと

    ERは音楽がどういう場所で奏でられているのかを設計するのに必須な要素ね。

    音楽は音楽そのものだけではなく、周りの空間設計を考える事も大事だということ。

    ただ意味もなくリバーブを使えばいいというわけではなく建築家の気持ちでERを駆使して音を組み立て…

    って!!!あああああ貴方なんで入ってくるのよっ!!!
    だって、りんちゃんずっと湯船でシューゲイズしててさびしそうだったから

    わたしも一緒にお風呂入ろうと思って!

    今からわたしたちで世界一綺麗なアーリーリフレクションを響き渡らせようよっ!



    おまわりさんこいつです




    大丈夫だよ!絶対、大丈夫だよっ!


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