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あのね!

    りんちゃん、あのねっ!

    えすえむしょりってなあに?
    何よ…レコード屋…。

    って!?えええええええすえ…ですって!?

    貴方何を言っているの…だ、駄目よ…そんな事…。

    し、失礼するわ…!
    ちょっと待って!

    りんちゃん、わたしどうしても知りたいのっ!!

    お願いっ、この通りだよっ…。
    ちょ、ちょっとそんな顔で迫られたら…こ、断れないじゃないの。

    …わ、分かったわ…この本を貸してあげるけど

    ぜ、絶対人前で読んでは駄目だから…。

    バンドのメンバーにも絶対内緒よ…。
    このご本を読めば分かるんだねっ!

    お父さんとテレビの音楽番組見てたら

    最近の若い作曲家はミックスえすえむしょりしすぎだよなぁ

    確かに音の分離音圧は良くなるけどさぁ、ちょっとやりすぎだよってお父さんが言ってたの。

    りんちゃんありがとう。お家帰ってじっくり読んでみるよっ!じゃあねっ!
    待ちなさいレコード屋っ!!

    早急にその本を私へ返しなさい!!今すぐにっ!
    えっ??

    ど、どうしたのりんちゃん…

    老媼茶話に出てくるしゅのばんみたいな顔してるよぅ。
    それは、M/S処理のことだからっ!

    あ、貴方ね…本当に気をつけなさいよ。

    言葉を正しく覚えていないと世界が一瞬にして滅亡することだってあるのよ…。
    あれれ…聞き間違えてたのかなあ…わたし。

    お父さんが言ってたのM/S処理って言うのかあ。

    じゃあじゃあ、りんちゃん!

    M/S処理ってなあに?
    全く…。結局何時もこうなるわけね…。

    貴方、定位マスタリングについては前に教えたわよね?
    うんっ!定位音が置かれてある場所だよっ。右よりとか、左よりとか真ん中とか。

    マスタリング音楽を仕上げる時の大事な作業だよねっ。

    これをすればどっどーーんと音圧が上がるんだよねっ?

    あってるかなっ?
    まあ、そんな感じね。

    でも、実は普通にマスタリングしただけでは限界があるの。

    それは、音楽というものはが真ん中…つまり定位的にセンターに集中しているからよ。
    ショッピングセンターに集中しちゃって、もう限界??

    なんだか、それってうちの商店街みたいだよう…。
    ええ。まあ同じようなものだわ。

    普通、音楽のデータはLチャンネルRチャンネルで出来ているのは知っているわよね?

    センターの音はLチャンネルRチャンネルどちらのファイルにも含まれているから

    どうしてもセンターの音が大きくなってしまうの。

    例えば、私達のバンドの曲だとミックスの時に両サイドギターの音を置いているわよね?
    うんっ。

    さきちゃんのアコギとか、りんちゃんのギター右より左よりに結構音を寄せているよね。

    逆にボーカルとかドラムとかベースセンターから聴こえるようにしてるねっ。
    そうね。

    ベースドラムボーカルはしっかり聴かせたいから、普通はセンターから聴こえるようにするわね。

    そういう風にミックスをしていくと自然とセンターに音が集中していくわ…。

    それで、そのままの状態でマスタリングをすると

    目立っているセンターの部分が優先的にさらに持ち上がる事となり、そのうちピークを向かえるわ。

    そうなるとマスタリングは打ち止めよ…それ以上音圧は上がらなくなる。
    えっとえっと…つまり…

    センターの音だけがずっといい思いしてサイドの音は一生陽の目を浴びないって事だよねっ。

    …ひ、ひどいよっ…りんちゃんっ!

    それってチャスコが大繁盛して、いくら集客の限界を迎えたところで

    日向美商店街にお客さんが流ることなんてあり得ないって事!?

    商店街に活気を取り戻すなんて、しょせんメルヘンファンタジーの類だったって事なのっ!?

    あんまりだよっ!!ひどいよっ!!
    ちょ…ちょっとレコード屋、く、苦しい…意識が…

    お、落ち着きなさいよっ…

    まだ、話は終わってないのよっ!
    あっ!そこで正義の味方、M/S処理さんが出てくるんだねっ!

    どんな時でも希望を忘れちゃ駄目だよねっ、りんちゃん!
    全く…私だからまだ良かったものの…。いや、全然良くないけれど…。

    貴方のそのスイーツ脳、本当に危険極まりないわよ…。

    M/S処理とはサイドから聴こえる音とセンターから聴こえる音を完全に分離させる処理の事を言うの。
    えっ!!を分けるんじゃなくって

    真ん中から聴こえる音とから聞こえる音を分けるって事っ?

    す、すっごいね!!どうしてそういう事ができるのっ!?
    音は逆位相を当てると無音になるという原理と

    インバートという位相反転させる機能を使うんだけれど…

    まあ、これは貴方には難しいから詳しい説明は省くわね。

    とにかく、M/S処理によってセンターサイドの音をそれぞれ分離させて

    個別に調整できるようになると様々な事が出来るようになるわ…。
    じゃあじゃあ、目立ちすぎるセンターさんを引っ込ませて

    その分サイドさんを上げる事とかできるのかなっ?
    そう。殆どがその様な使い方をするわね…。

    M/S処理分離した後にセンターサイドの音の大きさや派手さの差を無くす調整をして戻せば

    マスタリングした時に、センターだけじゃなくサイドもしっかり聴こえるようになるわね。

    結果的に、すごく煌びやかな音楽になり音圧M/S処理していないものよりも大きくなるわ。
    ふぉおおおおお!!

    それってチャスコに集まっている、お客さんを商店街に呼んで

    街全体がもっともっと盛り上がるって事だよね!!

    あっ!もしかして…わたしたちのしている事ってM/S処理に近い事なのかなっ??
    …貴方、面白い事言うわね。

    でもね、レコード屋。M/S処理はすれば良いってものじゃないのよ。

    そもそもが位相を変えたり、元の音から少しかけ離れた事をしているわけだから。

    あまりやり過ぎると、音が不自然でおかしくなってしまうの。

    最近特にそういう音楽が多いから、貴方の父親もそんな事を言っていたのだと思うわ。
    分かってるよ、りんちゃん。

    無理やり商店街に来てねって言ってもダメって事だよねっ。

    だからわたしたちはバンドの練習をしっかりやっているし

    いつだって心を込めて演奏しているよっ。

    私達の商店街に自然と足を運んでくれるように願って。
    そうね…。

    私も最初はどうして私がバンドなんかにと思ったのだけれど…

    今は…貴方と全く同じ気持ちだわ。
    うん、頑張ろうねっりんちゃん!

    よーし、お腹もいい感じに減ってきたから

    わたしシャノワールちくパ食べてくるねっ!

    まったねっりんちゃん!ありがとっ。
    ちょ、ちょっと!待ちなさいレコード屋!

    だから、その本返して頂戴っ!

    大丈夫だよ!絶対、大丈夫だよっ!


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