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NEW SONG
閠槞彁の願い
NEW SONG
DARKSTEP
DJ TECHNORCH & RoughSketch
Sound / DJ TECHNORCH 「RoughSketchくんにならきっと分かってもらえるはず…」
と、企画書みたいなテキスト量のPDFをドキドキしながら送信していました。
この曲は一体どういう風に完成するんだろうか?とワクワクしながら、
終始RoughSketchくんの愛に包まれたコラボと成りました。

あらゆる意図を受け止めそして乗り越えてもらいながら
最終的にとても素敵なサウンドに成ったと思います。
いつまでも愛していただければ幸いです。
Sound / RoughSketch
昼でも夜でもおはようございます! beatnation RHYZEとNotebook RecordsのRoughSketch(ラフスケッチ)です!

「DJ TECHNORCHさんはBEMANI曲を作る段階でこんな所まで考えているのか!!」
と、衝撃的でボコボコにされた気持ちになりました。
テキスト情報を読んだだけで止まらないワクワク感!
この曲はひょっとして真の意味で完成することはないんじゃないか?というゾクゾク感!
今までいろいろな方とコラボさせていただきましたが、刺激の方向性がまるで違う!

そんなボコボコにされた感覚を音で仕返ししよう!という方向で進めていたら
うまいことボコボコなサウンドに仕上がったと思います!
末永く楽しんでいただければ幸いです!!

で、これ結局タイトルはなんて読むんですか? Visual / Taiyo Yamamoto お世話になっております、大昔にTECHNORCHさんの曲に勝手に映像を付けたのを思い出して一人悶絶した山本です。
HEROIC VERSEのT-REX vs Velociraptorに引き続きRoughSketchさんの関わる楽曲を頂き、この組み合わせに運命的なものを感じたり感じなかったりしました。

今回「閠槞彁の願い」というタイトル通り、閠槞彁をイメージした映像となります。
閠槞彁というと皆さんそれぞれ思い浮かべるものがあるかと思いますが、自分なりの解釈を落とし込みつつ、最近やたらと観ているホラー系映画の影響を多少受けつつまとめてみました。
IIDXにおいては割と異物感のある雰囲気になった気がするものの、曲の世界観を広げるのに一役買えれば幸いです。


...で、閠槞彁って何ですか? 【閠槞彁の願い】 研究室の倉庫で、そのような手書きのラベルが貼り付けられた一つのジュラルミンケースを見つけた。 鍵がささりっぱなしの錠前をあけると、中にはよく分からない材質の渦巻状の物体が入っていた。私は助手という立場上、 無限に増えてゆく研究とは縁もゆかりもないガラクタの山と本当に必要なごく少数の物とを正しく整理する必要を感じ、 ケースを片手にため息まじりに四王天教授のもとへと向かった。

部屋に戻ると、地面にまでつきそうなその長い髪を、彼女は窓際のデスクで金色に輝かせていた。

「四王天教授ッ、シオウテンキョウジュ!なんですかコレ?」

「そんなに大きな声を出さなくたってちゃんと聞こえてるよ真鍋ちゃん。 あぁ、ソレね。空からの落とし物だよ。去年のクリスマスに町田に千個ぐらい落ちてきた例のやつ。知ってる?ソレはそのうちの一つ。」

「”町田スペースデブリ”、知らないはずないじゃないですか。でもコレ…絶対うちの研究とは関係ないですよね。また教授がわざわざ引き取ってきたんですか!?」

「まぁねぇ。」

「勘弁して下さいよ…うちの倉庫そんなものばっかりじゃないですか…」

「ごめんごめん。でもソレ、デブリなんかじゃないよ。誰かからのメッセージだと思う、私は。」

「は?」

「真鍋ちゃん…話したら真面目に聞いてくれる?」

「またですか…聞くだけですからねホント…私以外に学会とかでこれ系の話ってしてませんよね?私この研究室なくなったら困ります。」

「してないってばぁ。まずね、私は飛来物の中でこれにだけメッセージ性を感じたんだ。第一、おかしいんだよ。他は四方八方飛散したのに、 ソレだけは正確に駅のモニュメントに刺さってた。しかもご丁寧に台座のど真ん中に。」

「絵面が面白すぎてバズってましたね。というかアレだったんですねコレ…でも、アレで見た時とは形が。」

「そう、落ちてきた時ソレはまっすぐな線状の物体だった。でもいざ回収してみたら人の手で曲げられるぐらいにグニャグニャなんだよ。 こんな面白いものがなんでろくに研究もされずに放置されてたのかなぁ。」

「あの町田の惨状を見てそんなところに興味が湧けるのは四王天教授だけですよ。」

「そう、アレだけ破壊の限りを尽くした他の全てと違って、ソレだけが”針”のように綺麗に刺さっていたんだ。モニュメントの、ど真ん中に。」

「変な偶然もあるもんですね。」

「偶然なわけないよぉ!そこで私は考えたの!あの大量のデブリはこれを届ける為のケースだったんだよ。着地するまでに外側は全て剥がれ落ちたけれど、中身のソレだけはあるべき場所にあるべき姿で完璧に到達した。 ここには確実に何かメッセージがあるはずだと私は睨んだんだ。」

「また始まった…」

「いい?この線状のソレには決して途切れることの無い一本の溝がひかれていたの。政府はそこから何の情報も得られずに放置してたみたいだけど、私はそこでピンと来ちゃってね。 ソレを渦巻状に束ねて溝にレコード”針”を走らせてみたの。そしたらね。弐分程度の音楽が鳴った。メッセージはちゃんと入ってたんだよ。」

「え…それ、ホントですか?」

「録音データで良ければここにあるよ、聴いてみる?」

ソレは、実に不思議な音楽だった
ソレは、音楽と呼ぶにはあまりにもハヤスギタ
ソレは、音楽と呼ぶにはあまりにもウルサスギタ
爆弾みたいな連打音とけたたましい高音が鳴り響く

メッセージらしきものは殆ど聴き取れない
唯一聴き取れるとしたら日本語で【の願い】と言っているように聴こえなくもない部分だけだ

【の願い】
【の願い】
【の願い】
【の願い】

繰り返される願い
仮にコレが四王天教授の言うようにメッセージであるなら随分と執拗な願いじゃないか
だとすればコレは何の願いなんだろう…?
黙り込む私に四王天教授は勝手な解釈を語りだした

「送り主はご丁寧に日本語圏へ日本語でメッセージを送ってくれたんだよ。ただ、ソレが何の願いかまでは訳せなかったんだろうね。どうして訳せないのかな?私はソレが固有名詞だったからだと思う。 固有名詞なら当然だよね。太郎がアメリカへ行っても決して次郎にはならない。何の願いかは彼らの言語でそのまま発音されているんだよ。」

「発音されてるんですか?」

「されてるよ。【の願い】の直前に、何度も。」

「でも…人間にできる発音じゃない…」

「人間じゃないんじゃない?」

「え…?」

「ま!どっちにしてもさ!未知の固有名詞は音写に限るよね。音写!聴こえた通り聴こえたままに文字をあてるんだ。アメリカなら亜米利加、ブッダなら仏陀だよ。 意味なんかどうでもいいんだ。だから、さ。」

【閠槞彁の願い】

四王天教授は手書きのラベルを指差した。

「じゅん…りゅう…???えぇとコレ、読み方は。」

「読み方なんてないよ。ないのが読み方なんだ。当て字にはね、三つとも幽霊文字っていう文字を使ってるんだ。幽霊文字だよ、知らない?存在しているのに存在していないような漢字でね。 一応こう読むんじゃないかなっていう読み方はあるんだけれど、あくまでそれは便宜上でね。正確な読み方は誰にもわからないんだよ。異国の言葉を音写するのとはわけが違うからね。 人間が発音できない言葉を音写するんだから、写す方も読み方が存在しない文字をあてるのがスジってもんだと私は思うんだ。だからこれは【閠槞彁の願い】だよ。」

「!?」

今…
何と”言った”…?

四王天教授は何事もなかったかのようにその身を一歩近づけ更に語った。

「とはいえ人間同士で伝え合うのに全く発音できないっていうのも不便だと思うし、仮に私が将来これを世間に発表する日が来るとしたら…そうだねぇ…! 読みがなは【ぎょくろうかのねがい】でアルファベット表記なら【GRK NO NEGAI】とでもしておこうかな。まぁ、どっちも嘘ッパチなんだけどね、そもそも発音できないんだから。 人間は昔から口にできないものって不安なんだよ。口にできないものは存在しないとすら思っているのかもしれない。でもソッチにはなくても、コッチにはあるんだよ。 だから口にできないことを口にできないまま記録したんだ。記録って大事だよぉ?今は誰も信じてくれなくたって、百年後に読んだ誰かが信じてくれるかもしれないしねぇ。 おや?どうしたのぉ真鍋ちゃん?肩、震えてるよぉ?」

「いえ…なん…でもないです…」

私が数秒ほどうつむいていると、呼び出しの電話が鳴り四王天教授は慌ててタクシーをひろいに駆け出した。

「まだ一つ会議が残ってたみたいっ怒られちゃった!真鍋ちゃんまた明日ねぇ!」



私は見送りを終えると、渦巻状のソレをケースに戻し、丁寧にラベルを剥がし、今度こそ確実に鍵をかけ、その鍵を帰り道に相模川へと思い切り投げ捨てた。

私達は音に溢れた生活をしている。そこには決して口にできないような複雑な音色も沢山ある。私は、四王天教授が言うように口にできない概念があってもいいと思うし、口にできない概念を口にする気だってない。 ただ、口にできない概念はそもそも、口にできてはいけないのではないだろうか?

あの時、四王天教授は確かに口にした。口にできない概念を口にした。上気した瞳で私を見つめながら渦巻状のソレがなんであるかをまくしたてつつ、確かに一度だけはっきりと【閠槞彁の願い】と読み上げた。 それは渦巻状のソレに録音されたあの音ピッタリそのままの、実に正確な発音だった。四王天教授は自分が口にできた――人間が口にできるはずがないその発音を口にできた―― その事実に気がついていないようだった。気がついてはいけない、口にできてはいけない。少なくとも彼女が私達人間を【ソッチ】と呼んでいる間は。

四王天教授は何事にも熱しやすく冷めやすい
ガラクタにまみれたあのケースの存在も
きっとすぐに忘れるに違いない
是非 忘れていて欲しい
二度と【閠槞彁の願い】と口にすることがないように

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