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2013/07/09私立BEMANI学園物語 -新緑のころ- 後に伝説となる2人の出会いを描いたトゥルー・ストーリー

私立BEMANI学園生活を送っているみなさん、
BEMANI Fan Siteトップページの私立BEMANI学園バナーについてチェックしてましたでしょうか?
実は1曲解禁するごとに、絵柄が変わっていたのです。このたびまとめてアーカイブしちゃいます!




これは、私立BEMANI学園で後に伝説となる2人の出会いを描いたトゥルー・ストーリーである。




新学期。学長の孫である彼によって学園は支配されていた-------…

学長のコネを使い入学しただけでは飽きたらず、
学内の生徒・教師問わず本能の赴くまま尊大に振る舞う番長の姿がそこにはあった。
一部の生徒は彼の豪快で腹の座った人柄とひたすらに強い腕っ節を慕い自ら付き従うことを希望したが
大多数の生徒は彼自身と、彼の舎弟と、彼のバックグラウンドに怯え
ひたすらに大人しく学園生活を送ることを余儀なくされていた。




荒れた学園に、颯爽と現れた一人の転校生------

彼は、吹き渡る一陣の薫風と共に学園に舞い降りた。
転校初日にも関わらずフランス純文学、ことバロック文学に没頭する彼の目は
まるでヴァニタスの概念しか見えていないようであった。
彼がその細い指でページをめくるその刹那、学内に新緑の薫りが漂い、生徒たちはまだ見ぬ奇跡を予感した。




「おいちょっと待てや…来たばっかの新参が挨拶も無しかい?」

ある日の放課後、ふいに2人の邂逅の時は訪れた。

この学園では、番長とすれ違う際は必ず会釈し挨拶を行うという暗黙のルールがある。
ルール破りには当然罰が与えられ、番長の肩揉みや靴を温めたりするなどの奉仕活動が課せられるのだ。
しかし転校生はそんなルールはどこ吹く風といった具合に、番長の横を足早に過ぎ行く。

------転校初日ならばともかく、もう俺の存在と権威は知っているだろうに…。
番長は自分への不遜ともとれるその行動を見逃しはしなかった。




「ちょっち顔かしなぁ?」

転校生は制服が間に合っておらずブレザーで新生活を迎えていた。
しかし着古しているはずのブレザーですら、少しも縒れておらず新品のような仕立てである。
番長は、それすら気に入らなかったのか
これ見よがしに転校生のネクタイを掴み、鋭い眼光で睨みを利かせた。

転校生は読んでいた本を静かにぱたりと閉じ、番長を見据え------

「この学園を仕切っているのは君かい?」

涼やかな眼差しで、そう告げた。




「オマエに学園のルールを叩きこんでやる。裏の土手に来い」

恬淡とした転校生の態度に業を煮やした番長は転校生の腕を掴み、
廊下を軋ませながら否応なく外に向かう。

人気の無くなった校舎に、下校時刻を告げる校内放送と2人の足音だけが響く。
既に日は落ちかけ、オレンジ色の優しい光があたり一帯で乱反射していた。




「おりゃああああああくらえ!」

それは突然だった。
番長は裏の土手に到着するなり、渾身の一発を転校生に浴びせかけた。
見れば分かるとおり早さは全くないものの、重い、重い拳であった。

避ける隙はいくらでもあっただろうに。
転校生は、その拳を敢えて受けたかのようだった。

「クッ…なかなかやるね!」

さすがの転校生も泰然自若を貫いていたその顔を少しだけ歪め、
はじめて番長への称賛の言葉を口にした。




「だけどこっちも負けはしないよ」

間髪入れず、反撃のターン。
転校生は両手を前に出すや否や、詠唱時間0.01秒で「Αντιποινα σπειρα (ギリシャ語)」を繰り出した。
彼の周りの風景が蜃気楼のようにゆらゆら溶けてゆき
指の先からうずまき状に形が歪んでゆく…にわかには信じがたい現象が眼前に広がる。

「グワッ!ま…魔法だと!?」

これまで魔法というものに対し懐疑的な立場をとってきた番長であったが、
転校生が放ったものが神をも畏れる空間を圧縮・歪曲する上級魔法だと瞬時に悟ったのだった…。




拮抗が続いた。どれほどの時間が経ったのだろう。

-----番長は、気合い一発で魔法を跳ね除け続けた。
-----転校生は、拳の軌道をずらし、それでも避け切れない場合は時を超えて回避した。

拳と魔法…全く異なる性質の必殺技をおのが身に受けた2人は、
少なからずお互いの願いや想いが伝わっていくのを感じていた…。

「へへッ…やるじゃねぇかオマエ」
「君こそなかなかどうして」

あらん限りの力を出しきった2人の間に、一陣の爽やかな風が通り抜ける。
互いを認め合った瞬間だった。




こうして2人は激しい闘いの末、深い友情を築き上げたのだった。

次の日、学園の生徒たちは目を疑うような光景を目の当たりにすることとなる。
そこには、共に笑みを浮かべながらバロック文学の修辞について談義している2人の姿があった。
もう皆が恐れていた番長はどこにもいない。

番長のあまりに穏やかで優しい表情に、生徒たちの誰もが未来への希望を感じ
そして同時に、こうも思った。
転校生がこの学園にきた時に感じた奇跡の予感は、確かなものであったと…。




学園に再び平和が戻った…

僕らは永遠に忘れない----
風薫る新緑のころ、この学園に訪れた小さくもまばゆい奇跡を…

No Friends, No Life.





<筆者:T田>

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