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Biography

  • 2014年09月21日
    凛よ…。

    勘違いしないで頂戴。
    私は、何も自分で好きこのんで
    こ、こんな事をしているわけではないの…。

    このお店はお父さんの大事なお店よ。大事な場所なの。
    だから、こうやってお店の中で
    ずっと子供達に本を読んであげるだなんて良くない
    って思っていたから、先日お父さんに
    勝手な事してごめんなさいときちんと謝って
    もうこの様な事はやめようと思っていたら
    逆に続けなさいって強く言われたのよ…。
    いつもお客さんに対して一貫して偏屈であったお父さんが
    子供達には磊落鷹揚な態度を見せているの…。
    だから、お父さんの為なのよ…。
    お父さん、本当に楽しそうな顔をしているから…。

    そういえば、最近ベルが鳴るような音をよく聞くわね…。
    私が子供達にアイドルの真似事を頼まれて
    仕方無くそれをしている時に、決まって外の方から音がするから
    よくおぼえているわ…。
    一体何なのかしらね…不可解で不気味だわ…。



  • 2014年09月22日
    凛よ…。

    …レコード屋…おめでとう…。

    貴方に頼まれた出し物は…正直憂鬱しかないけれど…。
    年に一度の誕生日であるし…し、仕方ないわね…。

    でも、考えてみれば誕生日であるレコード屋以外
    見せる義理など全くないわね。
    許せる範囲は最悪の場合を想定しても喫茶店までよ…。

    洋服屋とはんこ屋。
    貴方達は私の出し物の際、目をしっかり閉じなさい。
    これは要望では無く、げ、厳命よ。
    分かっているかしら。



  • 2014年09月26日
    凛よ…。

    しばらく黙って見ていたけれど…

    貴方達の事だからまた色々と勘違いをしていそうだから
    一つだけ言っておくわ…。

    商店街の為にアイドル?…そんな浅薄な考えなど一切無いわ。
    大体私が商店街の今の現状を解決しようと
    本気で思っているのであれば
    こんな…ぐ、愚昧な手法など選ぶはず無いでしょう…。

    私の意思は別のところに強くあるの。
    それは私自身の問題…貴方達には言う必要の無い事ね…。
    私はただ、その答えを知りたいだけ。
    いえ、答えを導き出さなければいけないわ…。

    いいかしら…それだけは分かって頂戴。



  • 2014年10月05日
    凛よ…。

    はんこ屋、貴方何を言っているのかしら?
    ラジオなんて愚昧なものをする必要など一切微塵も無いわ。

    大体貴方達にとって
    この曲を演奏する目的はあくまで子供達の為でしょう。
    それと…私にとっては毎日のようにお店に訪れる
    子供達との関係に終止符を打ちたいという思いもあるの。
    子供達と、約束したわ…。
    貴方達の希望通り、滅亡天使として歌うから
    もうここで本を読むのは終わり、ここへはもう来ないで頂戴…と。

    それから、もう1つ。
    それは……別にここで言う必要ないわね…。

    とにかく。
    ラジオなどで不特定多数に聴かせる理由など全く見当たらないわ。

    ラジオは却下よ。
    分かったかしら?



  • 2014年10月07日
    凛よ…。

    仕方無いわね…。

    でも、契約が終了したら速やかに帰らせてもらうわよ。



  • 2014年10月12日
    凛よ…

    このライブをもって、滅亡天使は終いよ。
    事実上、最初で最後のステージということね。

    お父さんが滅亡天使の絵本を作っていたのは
    私も全く知らなかったから、本当に驚いたわ…。
    最近、また書斎に籠ったままだったから
    何かを作っているとは思っていたけれど…。
    まさか絵本を作っていたとは想像を越えていたわ…。

    製本もあそこまでしっかりしているのだから
    レコード屋が言うようにかなり前から作っていたということね…。
    でも、そのおかげで何の心置きなく終われるわ。
    …あの子を悲しませる事も無くなった。

    滅亡天使は私の元を去り、現実からイデアとなるのよ。
    これからは絵本の中のファンタジーとして
    子供達の心の中に生き続けることになるでしょう。

    約束は全て果たせたわね…。



  • 2014年10月17日
    凛よ…。

    今日は見事な秋晴れね。
    秋風も心地良くて、やはりこの季節はいいわね。

    お祭りのライブのおかげか、お父さんの絵本のおかげか
    そもそもの子供の性分なのかは分からないけれど…
    どれにせよ、うちのお店はすっかり元の平穏を取り戻したわ。

    でも、子供達は相変わらずこの商店街には来ているようだから
    お祭りの時に玩具屋と食料品屋がラインナップ増やしたのが
    功を奏して、そちらの方に興味が行ったのかもしれないわね。

    私に本を持ってきたあの子は…相変わらず商店街には
    足繁く訪れているようだし、そのおかげか友達も増えたようだし
    …何にせよ、良かったわ。

    とにかく、門前雀羅を張った古書の匂いのするこのお店で
    静かに本を読むという私の日常は取り戻せたわね。

    そういえば貴方達の日向美高校も
    もうすぐ中間テストではないかしら?
    洋服屋や喫茶店はともかく…レコード屋は大丈夫なのかしら。
    貴方、日頃勉学に勤しんでいる様子が全く伺えないのだけれど…。
    学校の成績…本当に大丈夫なの?
    毎日シャノワールでちくわパフェ食べている場合じゃないわよ。
    学業を疎かにすると音楽活動どころでは無くなるわよ。

    って…こう書くとまた変な風に捉えられるから
    予め言っておくわ。

    くれぐれも勘違いしないで頂戴。
    べ、別に既にテスト対策の予想問題を用意しているとか
    スイーツな貴方にも分かりやすいような参考書があるとか
    そ、そういう意味では無いから…断じて本当に。



  • 2014年10月18日
    凛よ…。

    レコード屋。
    やはり私が思っていた通り、貴方やれば出来るじゃない…。

    貴方は記憶する事はあまり得意ではないけれど
    勘が鋭いのか原理を飲み込むのは早いわね。
    化学や数学や物理はその原理をしっかり理解していれば
    そうそう難しいものでは無いのよ。

    喫茶店が夢中になっている、はんこ屋の倉庫の奥。
    私も気になるわ。
    はんこ屋は日向美で一番古いお店であるから
    もしかしたら、この日向美地区の古い歴史が
    色々と解明されるかもしれないわね。

    洋服屋、いい機会じゃない。
    肝試しでの決着が曖昧になっているわけだから
    ここで今一度決着をつけるということで。
    貴方、私には絶対負けないとか言っているんだから
    それをちゃんと実証してみなさいよ。

    まあ、貴方には負ける気は全くしないのだけれど…。



  • 2014年10月20日
    凛よ…。

    見苦しい言い分ね、洋服屋…。
    誰がどう見ても強がりにしか見えないわよ…。

    大体貴方ね…何故怖がるたびに私にばかりだ、抱きついてくるのよ!
    私は、その理解不能な行為に対して声を出しただけよ…。
    勘違いしないで頂戴…どう考えても貴方の完敗よ。

    喫茶店。
    はんこ屋の倉庫にあった古い資料なのだけれど
    ざっと概要ではあるけれど、昨日今日でお父さんと解読してみたわ。
    日向美の歴史については去年から私も色々と調べていたけれど
    この話は例のさくら野の歌姫伝説とも繋がっていて
    とても興味深いわね…。

    あの肖像画の2人の話はこんな感じよ。

    戦国時代にさくら野の方に小さなお城があった。
    その周辺は歌と舞が上手であると評判の姫が統治していて
    民衆に舞御前と呼ばれて慕われていた。
    舞御前の側近には橘姫というとても強い女武将がいつも側にいた。
    橘姫は日向美出身で丁度今の旧家通りのあたりに住んでいたようね。
    2人はとても仲が良く、橘姫は楽器も上手だったようで
    舞御前が美しい歌と舞を披露する時は
    橘姫はいつも側で合わせて演奏をしていたようね。

    そんな時、後に『大永の五月崩れ』と言われる
    山名氏と尼子氏の守護職を巡る内紛が起きた。
    舞御前は山名氏側についていたが
    尼子氏の猛攻により周辺のお城が次々に落とされて
    ついに大軍にお城の周囲を取り囲まれてしまった。
    橘姫は舞御前を守るために城を出て一騎当千の奮戦をしたけど
    結局多勢に無勢で、ついには城門を壊されてしまう。
    倉庫に残っている千子村正と書かれた例の黒いものは
    橘姫愛用の武具の一部が残ったものと考えられるわ。

    さくら野に伝わる歌姫伝説では
    舞御前はお城で悲運の自害を遂げたとなっているけれど
    はんこ屋の倉庫で見つかった書物を紐解いてみると
    実際は橘姫は舞御前を連れて
    お城の隠し通路を通って日向美へ逃げたみたいね。
    その時に協力したのが、はんこ屋の祖先であろう兎月堂宗久。
    私が去年図書館で読んだ郷土資料にも載っていた人物だわ。
    そう、はんこ屋の倉庫は昔はお城まで繋がっていたのよ…。
    …今も繋がっているかもしれないけれど。

    以前調べた時は兎月堂宗久は侵略してきた尼子氏から
    かなりの待遇を受けていたようなので
    上手く2人を匿う事が出来たのじゃないかしら?
    舞御前と橘姫のその後は分からないけれど
    はんこ屋の倉庫にあった2人の肖像画を見ると
    この日向美で仲睦まじく暮らしていたのは間違いなさそうね。
    きっと、その後も2人で音楽を民衆に披露し続けていたのだと思う。

    以上、書物に書いてあった物語よ。

    それにしても、この日向美という土地が
    戦国時代においても音楽と縁の深い土地だったとは
    とても興味深い事ね。



  • 2014年10月22日
    凛よ…。

    表彰式…。
    凄くおぼろげな記憶だけれど
    確かに小学校の全校集会でそんな事があった気もするわね。
    その時の洋服屋についての記憶は無いけれど…。

    私のお店の書庫で倉野川の古地図と古い住居地図を
    見つけたから、今少し見ているわ。

    まず、レコード屋が書いた日向美大字橘と呼ばれてた地区は
    具体的に旧家通り、そこから天神川をこえた向かい側一帯
    ふれあいロードの先の裏山の一部を指すみたいね。
    住居地図をよく見てみると
    その一帯は『立花』と『橘』どちらかの名字で
    埋め尽くされているわ。

    土地が名になったのか、名が土地になったのか
    どちらかは分からないけれど
    私個人の見解ではこれはこの辺に住んでいた人々が
    橘姫を慕って付けたものの名残だと考えられるわ。
    そして、それがそのまま土地の名前になった。

    何も同じ名字だから血族、親族という訳では無く
    昔は賢人偉人を慕い、その記憶に残す為に
    土地一帯で同じ名にする事はよくある事よ。
    この辺は白兎神社に保管してある古い記帳記録や帳簿を見れば
    何か分かると思うわ。

    今は旧家通りも新しいお家が増えたし
    裏山の方には地域センターができて
    天神川の向こう側は市営住宅が建っているから
    この立花と橘の名残はほとんど残っていないわね…。

    もし喫茶店の父方が倉野川出身だったのなら
    この土地の事をもう少し詳しく分かりそうだけれど…。