Biography
- 2014年07月27日凛よ。
レコード、昭和中期の洋服、純喫茶メニュー、骨董品…
言われてみれば貴方達のお店は全て
私達の世代はほどんど知る事のない古いものを置いているわね。
私のお店はお父さんが何て言うか分からないけれど…
でも、お父さん…
うちのお店に中高生なんて普段一切来ないのに
『今の中高生に読んで欲しい本』というコーナーを
作るのはどうかと、この間恥ずかしそうに
私に聞いてきたくらいだから
お父さん本当は若いお客さんにもお店の本を読んで欲しいって
思っているかもしれないわ…
いい機会になりそうだから、私から少し話してみるわね。
凛 - 2014年07月28日凛よ。
暗くてよく分からなかったけれど…
こ、こ、こんなに近くにいたのね…洋服屋。
どうりで、その何かが…
って、違うわよ…。
即刻、写真を撤去しなさいよ。
い、以上よ…。
凛 - 2014年08月04日凛よ。
私も少し窓を開けて聴いているわ。
これはガットギターの音かしら…。
喫茶店のギターの音色が風に乗ってきて
涼しげで心地良いわね…。
ボサノバ調にしたのはレコード屋のアイデアかしら。
どこか懐かしい感じのメロディーで
私も完成を楽しみにしているわ。
凛 - 2014年08月05日凛よ。
はんこ屋、おめでとう。
シャノワールに行く前に
兎月堂の大蔵出し祭りを少し覗いてきたけれど
今年も相変わらず凄いものが出品しているわね…。
あんな大英博物館に展示してあるようなもの…
一体この店のどこに収蔵していたのかしら…。
テレビで有名なエジプト考古学も来ていて異様な光景だったわ。
それにしても、太いわね…。
凛 - 2014年08月09日凛よ。
先ほど、洋服屋から
今年もハイテンションな凛の出し物期待してるし!
などという愚昧なメールが来たけれど
そもそも去年の洋服屋の誕生日の事など記憶にないわね…
貴方達の巧妙な罠にかかり私だけが道化を演じた事など…
一切、おぼえてないわ…
凛 - 2014年08月13日凛よ。
各店がお祭りに向けて色々と準備しているようね。
お父さんも最近ずっとお部屋にこもって何かしているわ…。
ずっと出てこないし、食事の時に少し聞いてみても
何をしているのか全然話してくれないから心配なのだけれど
どこか楽しそうなはにかんだような顔をしているから
きっと、お祭りの事で何かを準備しているのだと思うわ…。
それにしてもお父さん…あんな表情もするのね…ふふ。
とうわけで、お店番をずっと頼まれているから
私も今日、お店の本を整理して一通り並べかえてみたわ。
日頃から文学を嗜んでいない人にも
分かりやすい昔の名著も沢山並べておいたから
読書感想文の宿題を終えてないだろう貴方達も
一度見に来るといいわ…。
凛 - 2014年08月13日凛よ…。
それで…
何故今レコード屋が私の部屋にいるのかしら…。
洋服屋からレコード屋の宿題を頼んだという主旨のメールが来て
早くバンドの曲を仕上げてもらわないといけないから
宿題を教えるのは…まあ、別に構わないと思っていた矢先に
電話が来たと思ったら貴方、もうお店にいるなんて…
貴方はいつもいつも本当に突然すぎるのよっ!
それにその大きな荷物は何よ…
まさか今日中に終わらせようとするつもりなの…?
凛 - 2014年08月13日凛よ…。
レコード屋。
読書感想文というのは、自分で本を手にとって
じっくり読んで作者の思いを感じながら書くものよ…。
…何故、私が読み聞かせをしなければならないのかしら…。
でも、まあ…よく考えると
貴方が本を読むとなると数分で寝てしまう事は確実であるし
そうなると、私はとても迷惑だし
これで宿題を片付ける時間短縮になるのなら、別にいいけれど…。
ってえええええええ!?
貴方なななな何こんな本持ってきているのよっ!!
凛 - 2014年08月14日凛よ。
はぁ…やっと終わったわ…。
難しい問題は無かったけれど
レコード屋は期末テストの点が悪かったみたいで
夏休みの宿題以外にも課題が色々あって
量がとても多かったわ。
あやうく本当に徹夜で宿題するところだったわよ…。
当のレコード屋はというと…気がついたら寝ていたわ。
どうしてもこの小説を読んで欲しいというから
仕方なく…レコード屋の顔も見れずにずっと朗読して
やっと読み終わって本を閉じて見てみたら
原稿用紙に上ですやすやと寝ているし…。
文字はちゃんと書いてあったから
感想は書いているのかしら?と見てみると
半分寝ていたのか、途中から
バンドの活動報告になっているじゃないの…。
「イブ、さきちゃん、めうめう、りんちゃん。
これからもずっとずっと一緒にいようね。」
って私達の似顔絵を書いて結んであるけれど
これ全然本の感想になってないわね…。
全く…本当に…しょうがないわね…。
凛 - 2014年08月15日凛よ…。
レコード屋はかつての商店街バンドの
ピアニストが愛用した楽器を譲り受け
洋服屋はかつての商店街バンドのベーシストから
ウッドベースの奏法や技術を学ぼうとしている
喫茶店もかつての商店街バンドのギタリストが
バンド時代に愛した奏法を一生懸命再現していて
はんこ屋はかつての商店街バンドのドラマーから
ボサノバのパターンを熱心に教わっている……
つまりこれは、かつての商店街バンド
『日向美ブルームーン』のミュージシャンスピリットが
私達の体を通して表現されている、ということになるわ…。
故きを温ねて新しきを知る
今まさにこの言葉通りになっているのではないかしら。
本当に不思議なものね…。
たった1つの音楽があっという間に
世代を越えて商店街の人々を同じ気持ちに結びつけるなんて。
…貴方達に出会う前の私だったら…本当に考えられなかった…
これが、レコード屋がずっと信じている力ね。
私も…今は貴方と同じように信じているわ。
凛