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真・アヴェノセイメイB

暁の賢者たちと、アヴェノセイメイの間で繰り広げられる最後の戦闘。
数では圧倒的に勝る暁の賢者たちだが、アヴェノセイメイの力の前には劣勢を強いられていた。

レオン
「うぉりゃッ! どうだ!!」

セイメイ
「……よくやりました。 褒めてあげましょう」

必死のレオンの一撃も、アヴェノセイメイは幼子をあやすように受け止める。
攻撃を受けた箇所も瞬く間に元に戻り、ダメージを負った様子は見られない。

シャロン
「瘴気が傷を癒やしている!? これでは埒が明きませんわよ!」

ヤンヤン
「なら、何度でもやるしかないネ! コツコツやるのは慣れてるアル!」

サンダース
「死地など幾度も経験してきたわ!!」

イナリ
「みんな、兄様が少し時間を稼いでほしいって! 出来る?」

レオン
「またなんか、秘密兵器があるのか? よっしゃ、まかせとけ!」


リック
「破ッ!!」

リックが攻撃魔法を連続して放つも、魔法自体が無効化される。

リック
「くっ、今度は瘴気で掻き消した!?」

マラリヤ
「瘴気と言っておけば、何でもアリなのかしらね。 便利なものだわ」

ミュー
「なら、みんなの攻撃を一点に集中させましょう」

タイガ
「任しとき!」

ユリ
「どっかーんっていくよ!」

セイメイ
「――全ては無為」


複数人による同時攻撃も、やはり同様にかき消されてしまう。
アヴェノセイメイは諭すようにつぶやく。

セイメイ
「大丈夫、諦めて良いのです。
 どのような悪い子であれ、わらわは優しく抱きとめましょう」

アヴェノセイメイは降伏を勧めながら、瘴気による攻撃を放つ。
アロエとメディアがそれを必死に防御する。

アロエ
「あなたにそう言われたって嬉しくない!」

メディア
「そうよ! アロエお姉ちゃんに賛成!」

セイメイ
「これはわらわの怒りではありません。 単なる仕置きですよ?」

ラスク
「そういうのを押し付けられても困るよ!
 僕らは悪い子じゃなくて、どっちかと言うと正義の味方だからね!」

ハルト
「その通りだ! 貴様の主義は所詮は独善。
 そんなものに敗北する我らではない!」

レオン
「うおっしゃ! まだまだ行くぜぇぇ!」


劣勢の中、暁の賢者たちは不屈の言葉を叫ぶ。
すると、それに呼応するかのようにレオンのグリモワールに声が響いた。

≪ハッ……諦めが悪いのも似てんのかもな。
 手が足りねぇか? ライバル≫

レオン
「この声は……、なっ!? グリモワールが光って……!」

レオンのグリモワールから溢れ出る凄まじい光はやがて人の形を成し、レオンの前に立つ。
その姿は以前、消滅しかけているところをグリモワールに封印した好敵手、グリム・レオンだった。


セイメイ
「あなたは……、礎になったはずの人形が何故?」

レオン
「……お前!? 消えたんじゃ……!」

グリム・レオン
「ハッ、オレたちを作った馬鹿野郎の最後の善意ってとこだ」

グリム・レオンの言葉を契機に、暁の賢者たちのグリモワールが次々と光を放ち始め、やがて多くの姿が立ち並ぶ。

シャロン
「あなたたちは……!!」

リエル
「エボルグリムのみなさん……!?」

暁の賢者たちの前に姿を現したエボルグリムたち。
彼らの姿は封印されたときのままだが、そこにかつての敵意は感じられなかった。

グリム・シャロン
「まったく不出来で困りますわねぇ、オリジナルは。
 さぁ行きますわよ、リエル!」

グリム・リエル
「マスターよりはいささかマシかとは思いますが。
 でも……はい、最後までしっかりとお世話させていただきます」


グリム・カイル
「はははははっ! ずいぶんと圧されているではないか!
 仕方無い、我の力を貸してやろうッ!」

グリム・ユリ
「私のオリジナルはがさつで少々頼りないですからね」

カイル
「僕たちのグリモワールの形代が、瘴気を取り込んで彼らを形作ったんでしょうか!?」

ユリ
「うぉぉ、よく分かんないけど、すごい!」



グリム・タイガ
「キミたちだけでは勝つ確率はほぼゼロだ。
 しかし、僕たちが力を貸すことによって……」

グリム・リック
「100%の勝利にしてやるぜ!
 なぁ、オリジナル。 オレ様は勝つのも、ダチに勝たせるのも好きなんだぜ!」

リック
「お前……ッ」

タイガ
「あんな仲悪うしとったのに……どえらいことになってきよったわ!」


シャロン
「これはまるで、神の御業ですわね。 ……イナリさん?」

イナリ
「わたし、感じた……ご先祖様の力」

ルキア
「え? それってどういうこと?」

ムジナ
「ご先祖様は自分がいつか瘴気に堕ちてしまったときのため、
 何らかの力を封じていたのでしょう」

イナリ
「これがご先祖様……セイメイ様の本当の願いなんだね」


アイコ
「まさか……敵ってことはないよね?」

マヤ
「それは無いみたいよ。 だって、ほら!」

グリム・マヤ
「アイコ! 最後のケンカだ! 気合入れていくよ!」

グリム・アイコ
「はぁーい。面倒だけどやるしかないよねー。
 まぁ、マヤちんと一緒だし、たまには本気出すのもいいかもね」


グリム・クララ
「はいはーい、また会えたね~(^▽^)
 さぁ、はるるん、あーしたちも出遅れてらんないよー?」

グリム・ハルト
「次は絶対に力をコントロールしてみせる……
 ……って、ちょちょちょ、待ってよクララ!」

ハルト
「く……あの様子で大丈夫なのか? 俺のエボルグリムは」

クララ
「大丈夫だよ、きっと!」


ユウ
「えっと、力を貸してくれるんだよね?」

グリム・ユウ
「もちろんです! また会えて嬉しいです、お兄様♪」


ヤンヤン
「お前たちも助けてくれるアルか!?」

グリム・ヤンヤン
「報酬は高くついても構わないアルね?」

グリム・ラスク
「ま、ちょっとくらいはまけてやんなくもないけどな」

ラスク
「言ってくれるなぁ」


グリム・メディア
「さぁ、行きましょうか♪
 私たちの力であのヒトを天国へ連れてってあ・げ・ま・しょ♪」

グリム・アロエ
「小悪魔カワイイあたしとメディアちゃんとマラリヤちゃんの力、
 ありがたーく受け取ってねー☆」

グリム・マラリヤ
「ひぇ!? わ、わたし……このくくりなんですかぁ~?」

メディア
「すごい……本当にすごいよ、お姉ちゃん!」

アロエ
「うん……あたしもなんだか嬉しくなってきちゃった!」

マラリヤ
「ベタな王道的展開。 まぁ悪いものではないわね」


セイメイ
「何故……何故……?
 あなたたちは、わらわが創りし仮初の存在のはず……
 それが自らの意思を持ったまま……」

グリム・サンダース
「ワシはワシじゃい!
 それ以外の何モンでもないわぁぁッ!!」

グリム・ミュー
「そのとーりだー!
 みゅうはいつでもぜんかいぱわー!」

ミュー
「わたしたちもどかーん、です」

サンダース
「確固たる自我の前には、小難しい理屈も霞むか。
 フフ、頼もしいな」


セイメイ
「……意思を持ったのであれば、何故わらわに逆らうのです?
 母なるこのわらわに……」

グリム・レオン
「わからねぇなら教えてやる。
 アンタが正しくねぇからだよ、セイメイ」


セリオス
「心酔していた『あの御方』に、反旗を翻していいのか?」

グリム・セリオス
「笑止!
 今のあの御方の行いが真なる願いでないと知ったからには、こうするのが私の忠義ッ!!」
「貴様に力を貸すというのはいささか思うところはあるがな!」

セリオス
「フッ、お互い様だ」


ルキア
「手なんて貸さないんじゃなかったっけ?」

グリム・ルキア
「忘れたねぇ。
 つまらない事にこだわるのは、良い女じゃあないだろ?」

グリム・ルキア
「あたしらが一切合切のケリをつけてやろうじゃないか!
 さぁいくよ、お前たちッ!」


レオン
「へへっ、こいつらが味方なのが、こんなに心強いなんてな」

イナリ
「レオン、これっ!」

レオンに向かってイナリが球状の物質を投げる。

レオン
「うぉっ! なんだ、これ……」

ムジナ
「体内の瘴気を変換させる術式を封じた珠です!
 それをセイメイの身体に打ち込んでください!」


セリオス
「こちらは任せろ、レオン!」

グリム・セリオス
「そうだ、あの御方の役に立ってみせろ!」

シャロン
「サポートは万全ですわよ!」

グリム・シャロン
「しくじるんじゃありませんことよ!」

ルキア
「頼んだからねっ!」

グリム・ルキア
「やっちまいな、レオン!」

ヴァニィ
「わたくしたちの想いをのせてください!」



レオン
「よっしゃ! やろうぜ、ライバル!」

グリム・レオン
「ハッ! いいだろうライバルッ!!」

皆からのマナを受け、レオンとグリム・レオンは顔を見合わせる。
そして『反極珠』を打ち込むべくアヴェノセイメイへと、全ての力を込めて向かっていった。

レオン&グリム・レオン
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

セイメイ
「眩しい……眩しい……。 そんなものは、わらわには必要ない……
 だから、止まれ……止まりなさい!」

レオン&グリム・レオン
「止まってたまるかよぉぉぉぉぉ!!」


『反極珠』をその身に受けたアヴェノセイメイは、瘴気がマナへと反転する際の光の奔流に飲まれていた。

セイメイ
「ああ……ああ……わらわが、溶けていく。
 深く濁った心と身体が水流に飲み込まれたよう」

アヴェノセイメイにもう一人セイメイが寄り添う。
それは瘴気に蝕まれる前の、善なる心を持つかつてのセイメイだった。

善なるセイメイ
「あなたは消えるでしょう、もう一人のわらわ。
 ですが、この世界が美しく保っていたことは、わらわだからこそ知っています」

消えかかるアヴェノセイメイの目に、地平線から姿を現す太陽と、その光に照らされ輝く街並が映る。

セイメイ
「美しい…愛しい……世界」
「そうですか……わらわが耐えてきた意味は……ちゃんと、あったのですね……」

善なるセイメイ
「……ありました。だから眠りなさい、わらわよ。
 いつか、あなたの力が必要になるまで」

セイメイ
「ああ、そうですね……。
 これは、あの時と違う……心地良いねむ――」

マナの光にアヴェノセイメイは消えた。
同時に先ほどまで禍々しい瘴気をまとっていた魔法樹にマナの光が灯る。

ムジナ
「魔法樹が輝きを……!
 瘴気がマナに変換されたことで、本来の姿に戻ったのか……」

イナリ
「世界は救われたんだね、兄様!」


二人のレオンは瘴気が晴れ世界が輝きを取り戻していく様を眺めていた。

レオン
「へ……へっ、大勝利だぜ!」

グリム・レオン
「ハッ、ボロボロじゃねぇか」

レオン
「いいんだよ。
 みんな笑顔で終われればな」

グリム・レオン
「……知ったことかよ」

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